Dylan & The Dead [Live, 1987]
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人気ランキング : 29,327位
定価 : ¥ 1,200
販売元 : Grateful Dead
発売日 : 1990-10-25 |
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失われた名盤 |
近年、リハーサル風景をも含め、このライヴの全貌が発掘されている。それらを聴く限り、このツアーでのディランの歌唱は、彼の長い音楽生活の中でも最悪のもののひとつであったことは明らかである。棒読みだわ、音程外すわ、わざとバンドと歌唱をずらすわ、わたくしがデッドの一員だったら間違いなくキレルだろう。事実、デッドのメンバーのうち何人かは「二度と共演したくない」旨の発言を残している。
疑問とするところは、「なぜこれらの曲が収録されたのだろうか?」ということだが、それは全ライヴを検討してみればすぐわかる。このアルバムの曲の選考基準は、イイ! からでは決してなく、演奏に崩れが比較的少ないという理由で選ばれているのである。
ではどうすればよかったのか。
パトリック・ハンフリー氏が「ウィグル・ウィグルとジョーイの二曲しか入っていない地獄のジューク・ボックス」と評した、ディランの曲の中でも最悪の部類に入る「ジョーイ」を外し、「平和の鐘」「ザ・ウィキィド・メッセンジャー」そして「シェルター・フロム・ザ・ストーム」あたりを入れる。特に、「平和の鐘」は絶唱。このスーパー・スター同士の共演で、もっともうまくいったナンバーである。
この演奏を聴いて興味を覚えた方に是非お勧めしたいのは、デッドによるディランのカバー集である"Postcard of The Hanging"である。特に「見張り塔からずっと」が秀逸である。このアルバムの最後には、本盤に収録されなかったこのライヴから「マン・オヴ・ピース」が収められている(これも名唱!)。
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デッドでさえも |
バックがグレイトフル・デッドである。こんな事は他のアーティストでは有り得ない。まかり通る訳がない。超一流同士なのだから。しかし話がディランになるとデッドでもすんなりなのである。
ザ・バンド、トム・ペティ、そしてデッド。天才が向き合った時の化学反応は恐ろしい。
このライヴでもデッドならではのユルさがうまくディランに調和されている。特に顕著なのが「Joey」である。(オリジナルは名盤『Desire』収録)
この大作はデッドの壮大なライヴ・コンセプトに見事に合っている。
どちらが選曲したかは不明だが、アイデアで勝ちである。